2016年03月14日

納品のない受託開発

「納品をなくせばうまくいく」という本がある。

著者は元TISの社員であった倉貫義人氏で、現在(株)ソニックガーデンの代表であられる。
その倉貫氏の講演を聴く機会があった。

IT業界に身をおく私にはいささか奇異に聞こえる題名でもあり何かしらこの業界に旋風を起こしそうな予感がしたので、興味深く講演を聴いた。

IT業界の請負開発には発注者と受注者の思いの違いがある、とのこと(確かにそのとおりである)。
【発注者】
 より良いシステムづくりのため開発途中でも仕様変更を求める
 発注金額内にできるだけ多くの機能を積もうとする
 受注者の人物(スキル)・実績・見積数字などの根拠が曖昧で不安
【受注者】
 客の使う価値よりも要件定義に従うことを優先する
 決めたスケジュール計画を守ろうとする
 仕様変更は別見積もりである
 瑕疵担保責任があるので保険のためできるだけ工数水増しを狙う

結果、日経コンピュータに連載の「動かないコンピュータ」に見られる、使いにくい・使われない・動かないシステムができあがり、誰も幸せになれない。
このようなことから、倉貫氏が考えだしたのが「納品のない受託開発」であり、そしてそれが顧客に支持されビジネスも拡大しているという。

「納品のない受託開発」の話を簡潔にまとめると、
 ・納品しない(但し、作ったソフトは使ってもらう)し、納期も限定しない
 ・要件定義書を含むドキュメントも作らない
 ・開発から保守まで一貫して対応する
 ・途中の仕様変更にも柔軟に対応する
 ・お客様からの相談に積極的に応じるがお客様先には原則として訪問しない
 ・社内及びお客様とのコミュニケーションは全てPCでのTV会議で行う
 ・毎月定額の明朗料金
ということであった。

とはいえ、発注者も最初は本当に作ってくれるのかと不安を抱くだろうことから最初の1ヶ月は無償でソフトを作り成果を確認いただくことで継続契約につなげているそうだ。

日本のIT業界特有の多重請負や偽装派遣(と疑われそうな)ビジネスモデルからすれば、これは理想的な契約形態と私には思える。
本来はエンドユーザやメーカーは自社でIT技術者を直接雇用すべきところが、需要変動や高スキルの技術者不足などが相まって、いつしか現在の形になっただろうことを考えればあながち現在のビジネスモデルを否定はできない。しかし、このままのスタイルがいいとは思っていない、と、当のIT業界人の誰しも感ずることである。そこに気づき、先導者としてIT業界に風穴を開けようと取り組んでおられる倉貫氏には敬服する思いであり、いつしかこの形が普通になる時代が来ることを期待したい。

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中嶋 勇
posted by ボス at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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